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2026卒就活生に向けて

2025年 就活突破、何ごとも経験の言語化が基本だ

ペンの森塾頭 岩田一平

さあ、2025年――。1995年創立のペンの森は30周年を迎えました。新聞、出版、テレビ、通信社、広告……500人余りの卒業生がマスコミ関連企業で活躍しています。

創立者は毎日新聞出身の故瀬下恵介先生(1938~2021)。社会部、サンデー

毎日などで健筆をふるい、のちにニューズウィーク日本版の発行人を務めました。現役時

代は「七色の文体をもつ男」と言われ、名文記者として鳴らしました。わたしも学生時代

に先生がサンデー毎日副編集長ころに個人的にマスコミ就活の作文指導の薫陶を受けた一

人で、おかげで朝日新聞に入りました。ペンの森設立より十数年以前のことです。

 いま瀬下先生から受けた作文指導の要(かなめ)は、「作文とは自分の経験の言語化だ

」ということだと思っています。

 

新聞やテレビなどマスコミの記者は、ニュースの現場に赴き、それを体験し記事(文章)にします。

大学生(就活生)は、マスコミ(あるいはインターネットなど)に載った記

事や映像によってニュースを追体験します。その意味でマスコミに載った記事を元に書か

れた作文は、二次資料に基づくものといえるでしょう。では、大学生にとっての一次情報

は何かというと、それは「自己の経験」です。そこには紛れもない事実があります。その

事実の重みを大切にしたい。そんな自己の経験を元にして社会問題を考えていく。という

のも、記者は自分の掴んだ事実をニュースとして読者に伝える仕事だからです。採用選考

の中で、作文は「記者として大切な事実を読み手に伝える素養」があるかを見るのにもっ

ともよい課題として重視されてきました。自己の体験だからこそ、真似ものではない唯一

無二の事実です。よく書かれた作文からは、書いた人の顔すら浮かんできます。

 

あなたは自身が経験したことを全部知っていますが、

読み手は何も知らないのです。

それを伝えるには、まず共通認識である日本語がしっかりしていなければならない。さらに

、採用選考の作文は字数制限800字が多いのですが、その中で自分の伝えたい事実をど

う効果的に伝えるかの工夫が必要です。読み手(採用担当者)に「つまらない」と思われ

たら、せっかく伝えたい事実も相手の心をスルーしてしまい、何も伝えられなかったと同

じになってしまいます。わたしは、そのあたりのコツをアドバイスします。

 

ここ1、2年、出版社志望の受講生が増えてきました。出版物の基本にあるのも「ことば」ですね。

出版も何か伝えたいことを「ことば」によって相手に伝える行為という意味

では、新聞やテレビなどのマスコミ媒体と変わりないでしょう。出版志望者にも経験の言

語化=作文能力が同じように問われるのです。

 

その中でも特に出版人として大切な素養は発想力だと思います。

お金を出して出版物を買ってもらう(紙の本・雑誌に限らず電子出版も同じ)。

そのためには、お客さんに「おもしろい」と思わせる力が必要です。

これまでにあったことに人は惹かれません、おもしろいとは思わない。

これまでなかったことを見つける力、発想力が出版人には問われると思います。

ユニークなアイデアは、他に代わりのないという意味のユニークな自己の体験の中にヒントがあるでしょう。出版社を目指す本の虫、マンガの鬼たちも、本や雑誌、コミックの豊かな読書経験のうえに、自己の経験を掘り下げることを大切にしてください。

 

わたし自身は、朝日新聞社時代に、日刊の新聞記者にはじまり、週刊朝日、月刊のアサ

ヒカメラ、朝日新書、単行本……と、新聞記者も出版の編集者も現場での実地経験を積み

、定年間近には就活生支援のセクションにもいました。

 

まさに自己の経験を元に、みなさんの就活を助けたいと思っています。共にがんばろう。