エントリーシートの書き方④~そのESは5分でピンとくるか?

さて前回は私が友人の人事担当者から聞いた話を元に、

ESは5分で読まれ、判断され、人生を左右する可能性がある」

という話を書きました。

 

ではそんな短時間で判断されてしまうES

どうすれば「これは通したい!」と思われるものになるのでしょうか?

 

ESは何のためにあるものなのか?という「そもそも」の話から考えていきたいと思います。

 

そもそもESは紙だけで「あなた」という人間を活き活きと理解させるためのもの。

ばーっ!と5分で流し読みされても「あなた」という人間がみえてこないとダメ

 

あなたのESは5分でばーっと読まれても、

何十通もほかの人のESを読み、脳が疲れた状態で読まれても、

「あなた」という人間が見えてくるものになっているだろうか。

 

まず、そのために注意したいのが

 

「そのES一問一答になってない?」

 

ということだ。

 

ペン森に通いだしたばかりの学生のESによくあるパターンがこれ。

しかも結構優秀な学生に多いパターン。

 

ESに書かれてある問い1つ1つにはきちんと答えられている。

しかし全体を読み通してみると、

 

この人がどんな人なのか今一つよくわからない

 

というもの。おそらく最終判定で「C(不通過)」ではないものの「B(キープ)」になりそうなタイプ。

 

具体例で話そう。

 

志望動機

自己PR

困難を乗り越えた体験

最近一番気になった記事

あなたの好きなところ/好きでないところ

 

というES設問が某新聞社であり、

AさんがこんなESを書いてきたとしよう。

 

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志望動機:だれひとり取り残されない社会をつくりたい

いま日本にはSDGsの大きな期待が起きている。

社会的影響力をもつ新聞社で、脱炭素、女性役員比率の向上、子どもの相対的貧困問題など社会をより良くするための報道を行いたい。

 

自己PR:バレーで培った体力と根性

中高6年間バレーボールをしていた。大学でもサークルで週4練習。

寒い冬の日でも休まず練習し続けた。

継続して頑張り続ける力がある。

困難を乗り越えた体験:みんなの話を聞いて対立を解決

カフェのバイト先でまとめ役を任されたとき、仕事の些細な理解の食い違いで仲が悪くなり、シフトは崩壊寸前。

その時に一人一人と話をして目指すべき共通点を見出し、対立を解消した。

 

最近一番気になった記事:首相交代、その裏側

11×日の記事。官邸の内部関係者しか知りえない情報を深く取材し、政策対立ではなく個人的感情や過去の遺恨で対立が起き、政権が崩壊していく過程をつぶさに切り取っていた。

 

あなたの好きなところ/好きでないところ

夢中になるといくらでも頑張れる自分が好き、でも周りが見えなくなる自分もいるのでそこは気を付けたいところ。

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読んでみてどうだろうか?

悪くはない。

聞かれたことには適切に応えられている。

 

でもばーーーと呼んでみて、この人がどんな人か見えてきただろうか?

正直私には

 

ちょっと賢くて意識高い系の体力はありそうな若者

 

としか理解できなかった。

 

ある程度仕上がっているけれど、それ以上でも以下でもない。

就職活動のESを見ていると、この手のESはよく見る。

良く書けてはいるが「みんなと同じで浅い」ESの典型例と言ってもいいだろう。

 

このES設問は大きく2つの構造でできている。

①④の「記者としてのポテンシャルを見る」質問

②③⑤の「人としてのポテンシャルを見る」質問。

 

ここから記者、人としてのあなたを理解させなくてはいけない。

しかし、まず①④の「記者としてのポテンシャルを見る」質問を見てみると

 

志望動機:だれひとり取り残されない社会をつくりたい

と言っているが、内容が希薄。社会をよくするのは新聞社の報道の機能であってあなた自身の動機ではない。なぜそれをやりたいの?何をやりたいのか?がない。

 

そしてダメ押しが

最近一番気になった記事:首相交代、その裏側

ってSDGs関係ないんかい!

記者になって何をやりたいのかがよくわからないのでポテンシャルも理解できない。

 

次に②③⑤の「人としてのポテンシャルを見る」質問。

自己PR:バレーで培った体力と根性

体力、あるある系。でも体育会とか上には上がいる。そこで具体的にどんな力を発揮したのか?

そこに人としてのリアリティが出るのだが今一つわからない。

 

そして次の

困難を乗り越えた体験:みんなの話を聞いて対立を解決

で語っている話との関係性は?

 

この人の強みは体力なの?聞く力なの?今一つイメージがわかない。

 

そしてダメ押しが

あなたの好きなところ/好きでないところ

えっと「夢中になれる」ところがいいところなんだね。

体力?聞く力?夢中、なんなんだろう。

 

良くまとまっていて短時間でばーっと読むことはできるけれど、人としてのイメージは湧いてこない。

 

なんでこんなことになるのか?

多くの原因が

それぞれの設問で聞かれたことには一生懸命応えようとしている

その中で就活生向けyoutubeを見たり就活WEBや就活本を読んで上手な受け答えは勉強

それでなんとか書き上げたのがコレ

ということなんですよね。

器用にはかけているけれど伝わらない。

 

ではどうすればいいのか。

これはもう、ものすごく原点に立ち返るんだけど

・あなたは何を頑張ってきたどんな人なのか?

・そんなあなたは記者になって何を伝えたいのか?

ということの掘り下げに尽きる。

ペン森でも最初はこんな「器用だけど浅い」ESを書いていた人が、飲み、食べ、語り合いESを書き直すうちに「その人にしかない輝くもの」が見えてきて、見違えるほど内容が良くなったりする。

 

下記はあくまで一例だが、語り合い見えてきたことを活かした改善ESだ。

 

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志望動機:だれひとり取り残されない社会をつくりたい

大学のバレーボールサークル。2年間必死に練習してきた仲間が中退し退部。

子どものころ母と離婚した父親がリストラされ、大学の学費を払えなくなったことが原因だった。

奨学金は返済が高額であきらめたという。

学びたいけれど前に進めない、そんな社会の現場の声を届けたい。

 

自己PR:バレーで培った「副部長」力

中高6年間バレーボールをしていた。大学でもサークルで週4練習。

寒さや体力的につらい時も周りに声をかけ練習を続けてきた。

中学、高校、大学ともに「副部長」。みんなを上から引っ張るのではなく、疑問、悩みに耳を傾け、語り合いやる気を引き出し前に進める力がある。

 

困難を乗り越えた体験:みんなの話を聞いて対立を解決

カフェのバイト先でまとめ役を任されたとき、仕事の些細な理解の食い違いで仲が悪くなり、シフトは崩壊寸前。

その時に一人一人と話をして「コーヒーでお客さんの笑顔が見たい」という目指すべき共通点を見出し、対立を解消した。

 

最近一番気になった記事:地方都市聞こえ始めたインフラ崩壊

11×日の記事。少子高齢化、人口減少で税収が減り地方のインフラの維持が厳しくなっている。

市町村関係者への取材で高齢者をケアする地方公立病院にも十分な予算がなく丁寧な医療が犠牲になりはじめている。

税収の格差が命の格差になってはいけない。

 

あなたの好きなところ/好きでないところ

人の懐に飛び込み、共通点を見出し話を聞きだす共感力。

ときに相手に共感しすぎ、自分の心まで辛くなってしまうところは気を付けたい。

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疲れた頭でばーーーーっと呼んでも

 

もち前の傾聴力、共感力で陽の当たらない社会の現場を取材し、

そこから問題点を伝えていきたい人なのだ。

 

という人物像が理解できる。

もちろん100点満点ではないけれど

 

「とりあえず面接で話してみよう!」

 

という気にはなるだろう。

なぜこのようなESが書けるようになるのか。

 

それは繰り返しになるが

 

・あなたは何を頑張ってきたどんな人なのか?

・そんなあなたは記者になって何を伝えたいのか?

 

という核を明確し、それを5問の設問でわかりやすく並べることができているからなのだ。

ペン森で書き、飲み、食べ、語り、ぜひこの「核」を見つけ出してほしい。