ペン森OBのMN(元出版社勤務)です。
今回は大手出版を中心に業績好調でペン森でも志望者が増えている出版業界について考えていきたいと思います。
まず、最初にざっくり言いたいことまとめますけど
・むっちゃ受かりにくいぞ!!大手出版社
・大手だけで諦めるヘタレなら最初から受けてはいけない
・出版社はデジタルを活用するIP(知財)カンパニーへ
・企画・取材をどう「活用できるか?」も重要な新卒のポテンシャルに
順を追って…
まず最初に長年ペン森で学生を見続けてきて言いたいことは…
むっちゃ受かりにくいぞ!!大手出版社
ということです。
特に毎年よくペン森に現れるのが「漫画編集者志望」「ファッション誌志望」「文芸志望」の学生さん。
失礼なようですが、開口一番私は「むっちゃ難しいからね!まず受からないからね!!」と熱弁します。
だって出版社って大手の小学館、講談社、集英社さんでも各社10名~20名程度しか採用しないんですよ!!
そこに1万通以上のエントリーシートが押し寄せ、1次面接で数千人の学生が受験するんです。
よくペン森では「100人に1名の学生になれば通る」と言っていますが、
これね、もう「1000人に1人」のレベル。民放キー局と同じレベルの難易度です。
そしてさらに輪をかけて難しいのが
採用基準がいまいち見えにくい…
民放キー局だと正直「あーーーこれは受かるね!受かるよ!」というバリバリに優秀が学生が受かっていきます。
もはや物産、商事、伊藤忠でも余裕でパスするレベルの人々。
(おそらくボスコンでもいけるかも)
地頭良し!性格良し!体力もある!わかりやすい実績も持っている、「そりゃ受かるよね~!」という人が通る。
けれどそんな人でも通らないのが出版社。
ただそんな厳しい出版社でもペンの森で、一生懸命食らいつきOBOG訪問で鍛えられれば2次面接までは何とか送りこめる自信はあります。
昨年は大手出版の3次面接(ほぼ最終)に2名送り込みました。
でもその後が難しい…。
正直3次面接、役員面接での対象面接官との「縁」そして「採用計画との合致」という要素が相当大きくなる、と私は見ています。
「縁」はごめんなさい、本当に縁です。運です。
ただ大手で働く人々は「カルチャー方向に尖ってて広い」方が本当に多い。
漫画編集者であれば、最新の漫画はもちろん、手塚治虫先生から古典の少女漫画まで大体読んでいる。
それどころでなく、趣味として思想書も読めば、科学技術分野、SF、文芸と幅広く読む、読む、読む。
さらに最近のアート事情にも詳しかったりする。
「単なる最近のマンガ好き」
なんて領域をゆうに超えちゃっているんですよね。
そして読んでいるだけではなくて、これからどんな漫画を作るべきか?「自分なりの方向性」も語れる。
こんな人であれば「縁」要素が一気に強まる戦いの中であっても、誰が来ても打ち返せる、勝てる可能性は強まると思います。
(それでも落ちるのが大手出版の怖いところなんですけど…)
そして次の「採用計画との合致」。特にこれは「ファッション誌」「文芸」関連分野の皆さんに言えることです。
2021年、かつて人気だったファッション誌セブンティーンの月刊誌廃刊が決まりました。
集英社「セブンティーン」が月刊誌終了(ファッションスナップ)
https://www.fashionsnap.com/article/2021-06-22/seventeen-202109/
ファッションインフルエンサーが闊歩する時代、かつて隆盛を誇ったファッション誌はデジタル情報源に押されています。
ある出版社の方は飲みの場で私に言っていました「ファッション誌は不採算部門」と。
そうなるとどうするのか?
高いお給料の大手出版社社員をファッション誌の分野に採用することはなかなか難しくなります。
もちろんゼロ、というわけではないけれど、その数は減らさざるを得ない。
(もしかしたらだけど、会社によってはゼロという判断をするところも今後出てくるでしょう)
そうするとどんなにファッション誌を熱望していて優秀な人でも
「そもそも採用計画でこれしかとれないんや(またはゼロなんや)…ごめん、お祈りメール」
といわれる事態が容易に起こりうる。
これは同様に漫画と比べてお金になりにくい文芸でも同じですね。
採用人数は多くないし、年によって採用があったりなかったりするかもしれない。
じゃあ比較的業績好調な漫画分野ならいいか?
というと先ほども言いましたが、この分野には「単なる最近のマンガ好き」
なんて領域をゆうに超えた猛者が全国から押し寄せてくるんです。。
出版志望の皆さんにはぜひ、この厳しい現実を心構えて「大手出版目指すぞ!」と言ってほしいと思います。
じゃあ大手出版難しいから諦めろと私が言っているかというとそうではありません。
出版業界のすそ野は広いのです!!!だから
大手だけで諦めるヘタレなら最初から受けてはいけない
と声を大にして言いたい。
毎年出版志望者には大手4社に落ちたところで心が折れる学生が多い。
これまで頑張って、自分らしい志望も自己PRも見えてきたのに諦めてしまう。
本当にこれはもったいないこと。
ガベージニュース不破雷蔵先生によれば
出版社数は2907社・漸減中…出版社と売上高の関係をさぐる(2021年版)
とのこと。
確かに企業数は減っていますが大手を中心に1社あたりの売り上げは増加に転じているそうです。
売り上げ1000億以上の大手だけでなく100億、10億以上の企業まで視野を広げればまだまだ可能性は広まります。
(例えばここをみるとまだたくさん会社があることがわかります)
出版業界は腕のある編集者ならば、どんどん転職できる世界。
出版社で編集者として働きたい!というやる気があるのならば大手4社(小学館、講談社、集英社、角川)は腕試しくらいに思って、広いすそ野までどんどん受けてほしいと思います。
実際に21年のペンの森では漫画編集者を目指し、大手4社に落ちた後でも真摯に頑張った学生は
漫画専門の大手出版社に内定を獲得しました。本当にうれしかった。
じゃあそんな中で出版業界は今後どのように変わっていくのか?
どんな人材が求められるのか?
心構えのその「先」を考えてみたいと思います。
コメントをお書きください