出版業界研究2024~その心構え

ペン森OBのMN(元出版社勤務)です。

今回は大手出版を中心に業績好調でペン森でも志望者が増えている出版業界について考えていきたいと思います。

 
【Point】

・受かりにくいぞ!!大手出版社

・大手だけで諦めるなら最初から受けてはいけない

・出版社はデジタルを活用するIP(知財)カンパニーへ

・企画・取材をどう「活用できるか?」も重要な新卒のポテンシャルに

 

 

受かりにくいぞ!!大手出版社

 

毎年よくペン森に現れるのが「漫画編集者志望」「ファッション誌志望」「文芸志望」の学生さん。

失礼なようですが、開口一番私は「むっちゃ難しいからね!まず受からないからね!!」と熱弁します。

 

だって出版社って大手の小学館、講談社、集英社さんでも各社10名~20名程度しか採用しないんですよ!!

そこに1万通以上のエントリーシートが押し寄せ、1次面接で数千人の学生が受験するんです。

 

よくペン森では「100人に1名の学生になれば通る」と言っていますが、

これは「1000人に1人」のレベル。民放キー局と同じレベルの難易度です。

そしてさらに輪をかけて難しいのが

 

採用基準が見えにくい…

 

民放キー局だと「あーーーこれは受かるね!」という優秀な学生が受かっていきます。

もはや物産、商事、伊藤忠でも余裕でパスするレベルの人々。

(おそらくボスコンでもいけるかも)

地頭良し!性格良し!体力もある!わかりやすい実績も持っているという人が通る。

 

けれどそんな人でも通らないのが出版社(特に編集採用)。

ただそんな厳しい出版社でもペンの森で、一生懸命腕を磨きOBOG訪問で鍛えられれば、2次面接までは送りこめる自信はあります。

毎年大手出版の最終面接までは到達していますし、25年卒は集英社に内定も出しました。

 

しかし2次面接の後が難しい…。

 

ただ、難しいと言っても突破口はあります。

大手で働く人々は「カルチャー全般を深くて広く知る、好き」な方が本当に多い。

 

漫画編集者であれば、最新の漫画はもちろん、手塚治虫先生から古典の少女漫画まで大体読んでいる。

それどころでなく、趣味として思想書も読めば、科学技術分野、SF、文芸と幅広く読む、読む、読む。

さらに最近のアート事情にも詳しかったりする。

「単なる最近のマンガ好き」

なんて領域をゆうに超えている、

 

そして読んでいるだけではなくて、これからどんな漫画を作るべきか?「自分なりの方向性」も語れる。

今の読者はこんな人なので、こんな方向の作品がいいんじゃいか?と仮説をもって提案できる。

 

こんな人であれば「縁」要素が一気に強まる戦いの中であっても、誰が来ても打ち返せる、勝てる可能性は強まると思います。(それでも落ちるのが大手出版の怖いところなんですけど…)

 

そもそもその部門の採用が少ない(いない)

 

そして次の「採用計画との合致」。特にこれは「ファッション誌」「文芸」関連分野の皆さんに言えることです。

2021年、かつて人気だったファッション誌セブンティーンの月刊誌廃刊が決まりました。


集英社「セブンティーン」が月刊誌終了(ファッションスナップ)

https://www.fashionsnap.com/article/2021-06-22/seventeen-202109/

 

ファッションインフルエンサーが闊歩する時代、かつて隆盛を誇ったファッション誌はデジタル情報源に押されています。

ある出版社の方は言っていました「ファッション誌は不採算部門」と。

 

そうなるとどうするのか?

 

 どんなにファッション誌を熱望していて優秀な人でも

「そもそも採用計画でこれしかとれないんや(またはゼロなんや)…ごめん、お祈りメール」

といわれる事態が容易に起こりうる。

これは同様に漫画と比べてお金になりにくい文芸でも同じですね。

採用人数は多くないし、年によって採用があったりなかったりするかもしれない。

 

漫画志望なら大丈夫?

 

じゃあ比較的業績好調な漫画分野ならいいのか。

しかし「単なる最近のマンガ好き」なんて領域をゆうに超えた猛者が全国から押し寄せてくるんです。。

 

出版志望の皆さんにはぜひ、この厳しい現実を心構えて「大手出版目指すぞ!」と言ってほしいと思います。

 

じゃあ大手出版難しいから諦めろと私が言っているかというとそうではありません。

出版業界のすそ野は広いのです!!!だから

 

大手だけで諦めるなら最初から受けてはいけない

 

と声を大にして言いたい。

 

毎年出版志望者には大手4社に落ちたところで心が折れる学生が多い。

これまで頑張って、自分らしい志望も自己PRも見えてきたのに諦めてしまう。

本当にこれはもったいないこと。

 

出版社は大手だけではありません。

 

2023年の出版社売り上げランキングを見ると、売り上げ1000億以上の大手だけでなく100億、10億以上の企業もたくさんあります。ここまでまで視野を広げればまだまだ可能性は広まります。

 

出版業界は腕のある編集者ならば、どんどん転職できる世界。

出版社で編集者として働きたい!というやる気があるのならば大手4社(小学館、講談社、集英社、角川)はまず第一弾として必死で頑張って実力を高める機会思って、広いすそ野までどんどん受けてほしいと思います。

 

実際に21年のペンの森では漫画編集者を目指し、大手4社に落ちた後でも真摯に頑張った学生は漫画専門の出版社に内定を獲得しました。本当にうれしかった。

最近では電子漫画専門の企業なども採用を拡大しています。

 

じゃあそんな中で出版業界は今後どのように変わっていくのか?

どんな人材が求められるのか?

心構えのその「先」を考えてみたいと思います。